にーちゃんのMake a nice day

小笠原小説:ボニン・ブルー

2日目 太平洋

P6093139.JPG海から昇る朝陽が見たくて、普段なら絶対にしない早起きをしてみた。 真横から射す太陽の日ざしがまぶしい。





P6290005.JPGDSCF0622.JPG梅雨前線の遥か南の洋上、360度見渡す限り陸地は見えない。どこから来ているのか海鳥がちらほら。 もうこのあたりまで来ると梅雨も終わっているらしい。すっかり夏の太陽だ。
甲板には朝陽を見たついでにコーヒーを飲む乗客たち。 すでにTシャツ・短パン姿。 双眼鏡で何かを探す人の姿も見える。

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そのまま左舷の甲板で読書に没頭する。
どれくらいの時間が流れたか、突如、船内アナウンスの声。
「進行方向左側に見えてきた島影は、小笠原諸島の最北端、聟島(むこじま)列島です」 その声に乗客が左舷甲板に集まってくる。
いよいよ、小笠原なんだ。 海の色も信じられないくらいに蒼い。 おがまるが弾き飛ばす波しぶきの白が蒼い海にコントラストをつくる。
運良く鯨の潮吹きを発見した乗客が興奮を隠せない。

さらに南下すること数時間、やっと父島列島が見えてきた。
一旦船室に戻り荷造り。 たまたま隣同士となったお客さんたちに挨拶。
「いよいよですね」

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船はゆっくり青灯台を回りこみ、接岸する。 桟橋には大勢の出迎え。
「おかえりなさ~~い」
大きな声が響き渡る。 父島では来島者に「おかえりなさい」で出迎えてくれる。
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宿の迎えの車に乗りこみ、南国情緒豊かな通りを宿まで。 ドルフィンツアーと宿で有名なパパヤさんにお世話になる。

部屋の割り振りとオリエンが終わったら、相部屋となった男性と原付バイクを借りて昼ご飯を食べに行くことに。 彼は3回目の小笠原らしい。 偶然、昨夜のウクレレを一緒に聞いていた女性も同じ宿ということで、誘って3人で。
昼飯は島寿司。魚の漬け(づけ)をシャリに乗せてある姿は普通だが、わさびの代わりにカラシが使われている。 豪快に身が入ったアカバの味噌汁とあわせて満腹に。
つるっとした頭に豆絞りをした親父さんが、島の話をたくさん聞かせてくれた。英語ではBONIN(ボニン)アイランドと呼ばれること、それは無人(ムジン)島がなまってそうなったこととか。

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一行は、島の北側、宮の浜へ。 この時期の宮の浜は、ほぼ貸し切り状態だ。
扇形の浜辺には、ウッドデッキもあり優しい木陰もある。 沖合いの瀬戸に向かって両側が珊瑚、真中に砂の道ができている。
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シュノーケルを付けて海にからだを沈めると、島の名物ユウゼンや テングダイ、ナンヨウブダイたちが色鮮やかな色彩を放つ。


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本を読んだり、ビールを飲んだり、海に入ったりと、3人とも好きなように思い思いの時間を過ごす。 低い位置をゆっくりと流れていく雲の様に、時間もゆっくりと流れていく。ぷかぷか。


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夕方、一旦、部屋に戻り、ひとりで町中をぶらつく。 町と言っても、原付バイクで1分も走ると端から端まで走れてしまう。 夕食は居酒屋でとることにした。

暗い夜道を懐中電灯の灯りを頼りに浜辺を歩く。宿が主催しているナイトツアーに参加してみた。ガイドが灯りを消すと、暗闇に慣れてきた目に不思議な光景が浮かぶ。波がグリーンにきらめいている。夜光虫らしい。 顔を空に向けると、あり得ない程、満天の星。星。星。 思わず、口が開いたままになる。
シューッ!
突如流れる流れ星に、願いごとを唱える暇も無い。 しかし、次から次へと流れる流れ星に、願いなんか些細なものだと、そんな気分にもなる。 ナイトツアーに参加した私は、淡く輝く波や木の根元で緑色に光るキノコ「グリーンぺぺ」やオガサワラオオコウモリなどを見ながら、人間も大自然の一部なんだなってそう感じていた。


★この日記風小説は、事実を元にしたフィクションです。写真の人物はストーリーとは無関係です。★
★小笠原の写真は、「旅の風景」にも掲載しています。そちらもお楽しみください。